いつもドラマを見るわけではないけれど、昨年は「虎に翼」と「海に眠るダイヤモンド」を観ていました。
2024年10月期のTBS日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」、神木隆之介さん主演のドラマ、毎回心がひりひりしました。
1960年代の端島(軍艦島)に生きる人たちと現代に繋がる話です。ストーリーは語り尽せないので、無料配信などをご覧下さいませ。
TVの最終話ではなく、無料配信のディレクターズカット版の最終2話をご覧になることをお勧めします。(選挙や野球で放送回数が少なくなったためこんなことになったのだと思いますが、この最終話は珠玉です)
心に残ったことを徒然に書きますが、後ほど修正していくかもしれません。
(ご覧になられていない方は何のこと?って感じで申し訳ありません)
1⃣ 鉄平から話があると言われて一晩待っていた朝子。その夜島民がリナと島をでた鉄平を目撃し、それを最後に鉄平の消息が途切れる。
リナと駆け落ちした?と島民の噂の中、結局朝子は別の人と結婚し、新しい人生を踏み出した。けれど、彼女の心の時は止まったまま。
ここで真実を知っていたら、それまでと同じように朝子はいつまでも待っていただろう。辛いけれど、心は満たされていたかもしれない。 朝子はどちらを望んだのであろうか。
しかし、真実を知らないからこそ、別の朝子になることができた。
端島の炭鉱が閉鎖に決まった後、「東京に行って大学に行く。食堂の朝子ではない自分になる」と百合子に伝える。
屋上緑化に興味をもつ自分があったからこそ、全ての思い出は端島に置いて来たと言うように、鉄平を考えない生活になった。
最終回、鉄平の朝子への思いを綴った日記を読み、軍艦島に行き、以前鉄平がプロポーズに用意したギヤマン(ダイヤモンド=舶来のカットグラスの花瓶)を島に置いていたことを聞き、彼女の時は動きだす。
今は亡き友人たちと再会し、鉄平からプロポーズも受ける。
プロポーズを待ったあの日の朝子が、目の前にいる現代の年老いた自分に言う。「私の人生はどうだった?」「気張ったよ」との返答で微笑む朝子。
本当にここで、朝子の心が癒えたのが感じられた。
2⃣ 皆が相手を思いやっている、子供の頃から、例え事実であっても相手が苦しむようなことは伝えない。
友達も鉄平の親も真実を語ると朝子が困惑するので伝えない。
鉄平も、本来兄の犯した罪であっても、兄の子(甥)の命の危険が及ぶとなったら、自分が犯したことと言って甥の命を守った。
そのかわりに自分が何年も何十年も逃げ続けることになるが。
また、朝子に危険が及ぶかもしれないと、また自分の朝子への思いが新たな人生を歩んでいる彼女に迷惑になるかもと、彼女に何度も手紙を書きながら出す事はなかった。
でも、日記には、自分は案外しつこいのかも(彼女を思い続けている)と書いているとおり、鉄平はずっと朝子を思い続けた。
軍艦島が見える場所に家を買い、朝子が一緒に植えたいと言ったコスモスを庭一面に咲かせていたことでも、晩年も彼女を思い続けていたことがわかる。
自分の思いを優先させるのであれば、朝子に一緒に逃げようと言えたかもしれない。
鉄平の無私の精神が、尊く感じられた。 自分より大切にできる相手。
3⃣ 現代編の玲央が、朝子と共に過去の鉄平の足跡を辿り、鉄平の人となりを知る。鉄平の前向きの思い、行動が、生きる希望を持っていない玲央を揺さぶる。それは、鉄平の日記に挟まれていた朝子のコスモスの種を植えたら芽がでてきたのと同じように、確実にエネルギーが動きだした。
ホストを辞め、ツアーコンダクターを志す。色々な土地に行っても鉄平に会った人かもしれない。その親族かもしれないと思うと、他人の気がしなくなる。 前向きな姿勢は鉄平のよう。
朝子も最初玲央に声をかけたのは、鉄平と姿が似ていたからではなくて、玲央をほっておけなくて、まるで自分が鉄平の気持ちのようだったと話す。
血族と言う形でなくても、人の精神(スピリット)は心を揺さぶられた者たちに感化していく。
最後に朝子が「(鉄平のことを)玲央が覚えていてくれるのね」と。
過ぎ去った過去の人物。だけど。
死者も我々がまったく忘れてしまうまで、本当に死んだのではない」――ジョージ・エリオットの言葉を思いだした。
初恋が完結することの方が実際は少なく、せつなく、ひりひりするような思い出。
朝子のように話が動きださなくても、誰でも、もしあの時こうだったらと考えることはあるだろう。
色々楽しいことも辛かったことも思いだし、確かにあの時自分が生きていたことを感じる。
と、思うのも自分が歳をとったからだ。
シナリオは、福岡から訳有なリナが端島に来たことによって物語が動いていく。要所要所でリナが行動、その水滴に周りの人に波紋が起こるような感じ。わかりやすいです。
役者さんがすばらしい。神木さんの表情だけで魅せられます。
映像は、まるで映画のような最終話の仕掛けにしびれました。騙されたと言うか、記憶って曖昧なものってわかりやすい。こういう仕掛け、好きです。
監督や脚本家、演出家等が有名らしくこのチームで何作か作っているらしいですが、私は初めての鑑賞でした。